わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「ハーゼ公爵から食事に誘われた。どう思う?」
「ハーゼ公爵は、やめたほうがよろしいでしょう。公爵には娘が一人おりますが、あからさまに殿下を狙っております。先日のガーデンパーティーで、殿下の飲み物に痺れ薬を混入させるよう指示をしたのは彼女です。未遂に終わっているので、公にはなっておりませんが」
「クラリスがそう言うのであればそうなのだろう」
「殿下。はやく婚約者をお決めになってください。二十歳にもなって一人でふらふらとされているから、今まで以上に相手が執拗になっているのです」
「そう言われてもなぁ。こちらにとって婚姻を結んでメリットになるような令嬢もいないし、何よりもときめく女性に出会えていない。あ、クラリス。ここで相談なのだが、私と結婚しないかい?」
 王太子のアルバートが結婚を申し込んだのだ。本来であれば、喜ぶところだろう。それなのにクラリスは顔色一つ変えない。
「殿下。何を馬鹿なことをおっしゃっているのです? わたくしは殿下に仕える臣下です。それに、わたくしは誰とも結婚する気はございません」
「相手が私でも?」
「そこは一番あり得ませんね。殿下には、もっとふさわしい女性がおりますよ」
「ふさわしい女性って誰? まさか、私との結婚が嫌で、適当なことを言っているわけではないよね?」
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