わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 クラリスは目を細くしてアルバートを睨みつけるが、観念したかのように一人の女性の名を口にした。
 不思議なもので、意識し始めるとその彼女が気になって仕方ない。問題があるとしたら、その彼女がまだ成人を迎えていないことだろう。
 あと一年、あと一年と、彼女が成人を迎えたときに親をとおして婚約を打診しようとしたが、時期尚早であるとクラリスに止められた。
「殿下。ハリエッタ様が成人されるのを待っていたのはわかります。ですが、まだハリエッタ様は殿下のことをよくご存知ありません。ハリエッタ様の性格を考えますと、恐れ多いと言って断られる可能性がございます。まずは、ハリエッタ様との距離を縮めるのが先です」
 そう言って、アルバートとハリエッタの茶会などを、クラリスが裏で計画していた。
 それから紆余曲折あって四年、やっと念願のハリエッタとの婚約までもぎ取った。ハリエッタも二十歳になっていたので、女性側から見たら遅い縁談だったのかもしれない。だが、彼女が十六歳の頃から、二人の噂はなんとなく社交界にも漂っていたので、ハリエッタはかろうじて「行き遅れ」と揶揄されるようなことはなかった。
 むしろ、その手の悪意をすべて受け止めていたのがクラリスである。
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