わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 年齢を重ねるに連れ、彼女の行動は目につくようになる。挙げ句、社交界では『毒女』とまで言われる始末。独身女性を揶揄う言葉だ。
 それでも当の本人のクラリスは、そのような言葉を微塵も気にしていない。
 しかし、アルバートにも我慢の限界というものがある。彼女はやり過ぎた。いつも自分の身を顧みない彼女は、アルバートとハリエッタの婚約披露パーティーで、批難を集中的に浴びた。
「君は私の側にいすぎなんだよ。私の隣にはもう、ハリエッタという女性がいる。立場をわきまえてほしい」
 クラリスは間違いなくアルバートを利用していた。アルバートの側にいて横暴に振る舞うことで、自らの価値を下げていたのだ。
 アルバートもベネノ侯爵に苦言を呈したこともある。
 ベネノ侯爵もクラリスの父親として、噂についてを彼女に尋ねたこともあったらしい。
 だけど彼女は、頑なにそれでいいと言っていた。アルバートとハリエッタの仲が世に認められ、何年か先の未来に、この国を引っ張っていくような人物になってくれればいい。
 それが彼女自身の願いであり、そのために自分が犠牲になってもかまわない。
 クラリスほど、臣下として心強い者もいないだろう。それでもアルバートの良心がチクチクと痛むのだ。
 アルバートがハリエッタと出会ったように、クラリスにも唯一の相手と出会ってもらいたい。
< 198 / 234 >

この作品をシェア

pagetop