わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 そんな不安もあって、ハリエッタは久しぶりにクラリスと話をしたかったとのこと。
「今日はお誘いいただきありがとうございます」
 クラリスが案内された場所は、アルバートとハリエッタの生活の場となっている王太子宮にあるサロン。大きなガラス窓は庭に面しており、そこを解放すれば外へとつながる。明るい光をたくさん取り込んだ、とても華やかな場所だ。
「クラリス様。ウォルター領での生活には慣れましたか?」
 目の前にはお菓子や軽食が置かれたスタンドが並べられた。お茶からはみずみずしい果物の香りが漂ってくる。
「そうですね。とてもよくしてもらっております。これもハリエッタ様のおかげです」
「私とアルバート殿下は、クラリス様のおかげで婚約できたようなものですから。クラリス様にもそのような相手と出会っていただきたいと思ったのです。もしかしたら、余計なお世話だったのかもしれないと、後悔したこともあったのですが」
 ハリエッタの言葉どおり、余計なお世話だと思ったときもあった。特に結婚の話を打診された直後は、この二人を恨んだものだ。
 だけど、結婚の前にユージーンから手紙が届いて、少しだけこの結婚に前向きになれた。そして向かったウォルター領は毒が豊富と、クラリスにとっては願ってもいない場所だった。
 あの環境を見れば、アルバートもハリエッタも、クラリスの身体を慮っての紹介だったのだろうと理解した。
「あの、クラリス様。新婚生活はどのような感じですか?」
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