わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 そう言われても自分ではわからない。だけど、生活が大きくかわったから、それが影響しているのだろうか。
 毒師として王城にいたときは何かと慌ただしかったかもしれない。毒見はもちろんだが、母親と一緒に解毒薬を作ったり、さまざまな薬を作ったり、薬を与えたり。言われるがまま、何かしらの薬を作り、必要とする者に与えていた。
 しかし、ウォルター領ではどうだろうか。
 もちろん薬も作っているが、ゆったりと朝の散歩もできるし、森の散策も楽しめる。誰かに頼んで手に入れていた薬の材料も、今では自らの手で摘み取ったり捕まえたりできる。
 ゆったりとした雰囲気のなか、のんびりとした時間を過ごしていたかもしれない。
「ええ、以前よりも愛らしくなりました。とてもやわらかくなったと言いますか。以前は、少し冷たい感じがありましたけれども」
 クラリス自身もアルバートの前では冷たい表情を心がけていた。それは彼に害を与えそうな人物を威嚇するためでもあった。
「ウォルター伯のおかげですね」
 ハリエッタのその言葉は間違いだ。ユージーンのおかげではない。
「やはり、愛し合っていらっしゃるからですか? その……夜に……」
 なぜかハリエッタが恥ずかしそうに言葉を濁す。
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