わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 クラリスは小首を傾げた。
「夜?」
「あの……その……夫婦の営みです……」
 そこまで言ってハリエッタは両手で自身の顔を覆った。
 むしろ恥ずかしいのはクラリスである。
「は、は、は、ハリエッタ様。な、なにをおっしゃって……」
「クラリス様はご結婚されましたから、ウォルター伯とそういったことをされてもおかしくないと言いますか。ですが、私は……」
 自分のことは疎いのに、他人のことになると敏感になる。ハリエッタがそこまで言って、クラリスにはピンとくるものがあった。
「もしかして、殿下に求められていらっしゃるのですか?」
 ハリエッタは両手で顔を隠したまま、コクコクと頷いた。
(アルバート殿下は、いったい何を考えていらっしゃるの? このxxxx!)
 クラリスは心の中でアルバートに向かって悪態をついた。
 以前からハリエッタに対しては暴走気味のところがあったが、二人はまだ婚約の仲だ。婚前交渉を咎めるつもりはないが、ハリエッタの性格を考えれば、そこは慎重になるべきところなのに。
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