わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ユージーンが二通目の手紙を出すと、またすぐに返事が届いた。
 どうやらクラリスは他に気になる異性はいないらしい。だけど二年後の離婚には応じるし、二年後には王都に戻りたいとのことだった。ただ、ユージーンに好きな女性がいるのであれば申し訳ないと、謝罪の言葉が並んでいた。むしろ、それを理由にこの結婚を断ってもらえないだろうかとまで書いてある。クラリスからはこの結婚は断れないと、丁寧な文章で書かれていた。
 二通目の手紙を読めば読むほど、クラリスという女性がわからない。
 どうしたものかと思って「う~ん、う~ん」と唸っていたら「うるさいです」とネイサンから突っ込まれる始末。
「やはり、クラリス嬢も結婚を断れないそうだ」
「そうでしょうね。国王陛下からの命令ですからね」
「もし、俺に好きな女性がいるなら、それを理由に断ってくれと書いてある」
「いるんですか? 好きな女性」
 なぜかネイサンが食いついてきた。身を乗り出して、ユージーンの顔をのぞき込んでくる。
「いない、いるわけないだろう。だから、離婚前提の結婚をクラリス嬢に提案したんだ。結婚すれば世継ぎの話は出てくるだろうが、離婚した後に、どこから養子をもらうことも考えているから、それは問題ない」
「ユージーン様。枯れるのが早いです。とりあえず、クラリス嬢との結婚は受けると、陛下にちゃちゃっと返事をしてしまいましょう。世継ぎなりなんなりは、クラリス嬢と離婚した後に。もしかしたら、陛下がまた離婚後に別の女性をあてがってくれるかもしれませんし」
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