わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ハリエッタの手首をそっと離した。
「……んっ」
 顔に何やら布を押し当てられた。
(これは、睡眠薬? このにおいからすると、だいたい効果は一時間、二時間くらいかしら)
 つまり、この場所から一時間くらいで移動できる場所に連れ去られるわけだ。
 クラリスは全身の力を抜いて、四肢をダラリと垂らす。
 男たちによって両手両足を縛られ、頭からは何かをすっぽりとかぶせられた。恐らく、麻袋だろう。そして荷物のように、男の肩に担ぎ上げられた。
 王太子宮でここまでやるとは、絶対に手引きをした者がいる。
 クラリスはしっかりと意識を保ち、どこをどう移動しているかを推測する。
(きっと、裏口ね……馬車に乗せられたわ。本当に、荷物のような扱いね)
 荷台に転がされているようだ。
< 210 / 234 >

この作品をシェア

pagetop