わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
声が出そうになったのを寸でのところで呑み込んだ。まだ目覚めていることを悟られてはならない。
相手が一度身体を引いたのを感じ取り、首からぶら下げている瓶に、気づかれぬように手をかけた。
何かが触れた首筋が、外気に触れてひんやりとするのが気持ち悪い。
それに、心臓が口から出てくるのではないかと思ってしまうほど激しく動いていて、呼吸も少しだけ苦しい。
「あぁ……もうダメだ。我慢できない。クラリス様を私のものにする……」
もう一度、男が近づく気配がした。
クラリスはかっと紫紺の瞳を開き、不自由な手で瓶の中身を目の前の男にぶちまけた。
「うわっ」
液体が目に入り、男は顔を押さえながらよろめいた。その男は、やはりメンディー侯爵子息のファンケであった。なぜか上半身だけ裸なのが気になるところだが。
「わたくしを始末するおつもりですか!」
クラリスはソファに座ったまま、もだえ苦しんでいるファンケをギロリと睨みつけた。
彼は右目を押さえたまま、よろよろと立ち上がってクラリスを見下ろした。
「クラリス様。目覚めていらっしゃったのですか? 眠っているうちに、ひと思いにヤッてしまおうと思っていたのに」
相手が一度身体を引いたのを感じ取り、首からぶら下げている瓶に、気づかれぬように手をかけた。
何かが触れた首筋が、外気に触れてひんやりとするのが気持ち悪い。
それに、心臓が口から出てくるのではないかと思ってしまうほど激しく動いていて、呼吸も少しだけ苦しい。
「あぁ……もうダメだ。我慢できない。クラリス様を私のものにする……」
もう一度、男が近づく気配がした。
クラリスはかっと紫紺の瞳を開き、不自由な手で瓶の中身を目の前の男にぶちまけた。
「うわっ」
液体が目に入り、男は顔を押さえながらよろめいた。その男は、やはりメンディー侯爵子息のファンケであった。なぜか上半身だけ裸なのが気になるところだが。
「わたくしを始末するおつもりですか!」
クラリスはソファに座ったまま、もだえ苦しんでいるファンケをギロリと睨みつけた。
彼は右目を押さえたまま、よろよろと立ち上がってクラリスを見下ろした。
「クラリス様。目覚めていらっしゃったのですか? 眠っているうちに、ひと思いにヤッてしまおうと思っていたのに」