わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 相変わらず失礼なネイサンであるが、二年後のことは二年後に考える。
 ユージーンはクラリスへの返事を書くより先に、国王には「結婚を受ける」「素敵な縁に感謝する」といった、差し障りのない返事を出した。
 それからしばらくしてクラリスに向けて手紙を書く。
 ユージーンに好きな女性はいないこと。だから、国王には正式に結婚を受けると返事を出したこと。あとは、クラリスが好きなときにこちらに来てくれればいい――
 国王への返事はすらすらとペンが動いたのに、クラリスへの手紙は、ところどころ言葉に詰まってしまった。

 ユージーンが国王に正式に返事を出したためか、クラリスとの結婚の話はとんとんと進み始めた。ユージーンも一度はベネノ侯爵邸に足を運んで挨拶をすべきだと思っていたが、なかなかウォルター領を離れられない。魔獣が現れたという報告はないものの、討伐で領地を離れていたときの状況を確認したり、さらに領地内を見回ったりとしていたら、あっという間に二か月が過ぎた。
 それが落ち着いたからベネノ侯爵に訪問の伺いを出そうとしたところ、クラリスがウォルター領に来るという連絡が入った。どうやら、国王たちにせっつかれたらしい。
 挨拶ができなくて申し訳ないとベネノ侯爵から謝罪の手紙が届いたが、それはユージーンも同じである。ただベネノ侯爵はユージーンの立場をよくわかっているようで、結婚式の日取りなどはすべてユージーンの都合に合わせると書いてあった。
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