わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「その毒では死にはいたしません。ですが、旦那様。身体がお辛いですよね?」
「あ、あぁ。身体が熱くて、とにかく痛い……。この毒は、なんなんだ?」
「さすがに、旦那様に痺れ薬とかを持たせるのは心苦しくて……媚薬を……」
 ユージーンが眉間に深くしわを刻んだ。その一言で、自身の身体に起きている異変に気づいたのだろう。
「そうか……」
「ですが、解毒薬をお持ちしました。これを飲めば、旦那様の身体の疼きがおさまるかと」
 クラリスが薬の入った瓶をユージーンの目の前に見せたが、彼は感覚をやり過ごすかのように荒く息を吐いている。
「飲めますか?」
「無理、かもしれない。身体を起こせない」
「わかりました」
 クラリスは瓶の中身を大きく口の中に含んで、そのままユージーンに口づける。ユージーンがクラリスにしたのと同じように、クラリスも同じようにやり返す。
 解毒薬は彼の口腔内を満たし、そのまま嚥下した様子も伝わってきた。
 ほっと胸をなでおろして唇を離そうとするものの、がっしりと後頭部を押さえ込まれて、離れられない。これはユージーンが得意とする執拗な口づけだ。
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