わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「……んっ、ふぅ」
 ぽかぽかと彼の肩を叩いて、やっと解放された。
「な、な、な、何をなさるのですか!」
「こんな状態で君に口づけされたら、止まらなくなるに決まっている」
 寝台から離れようとするクラリスの手首を、ユージーンはがっしりと掴んでいる。それはまるで、クラリスに逃げるなとでも言っているかのように。
「ですから、それは薬のせいです。そろそろ解毒薬が効いてきたのではありませんか?」
「そうだな。少しは薬の影響もあるだろう。だけど、これだけは薬が効いていようがいまいが、変わらない」
「な、なんでしょう?」
 クラリスの胸は、激しく鼓動を打ち付けている。
「俺が君を愛したいという気持ちだな。俺は君を愛している。あのとき、真っ青な顔をした君を見て、俺がどれだけ焦ったかわかるか?」
「いいえ?」
 見ていないのだから、わかるわけがない。
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