わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「そうか。だったら、君の身体にわからせるしかないな。俺がどれだけ君を愛し、君を失いたくないと思っているのかを」
 そのままクラリスは寝台の中に引きずり込まれた。
 いや、抵抗するならそのまま彼をぶん殴って部屋から出ていけばいいのだ。
 それでもそうしなかったのは、クラリスもどこか彼とそうなってもいいと思っていたからかもしれない。
 いつからそんな気持ちが芽生えていたのか。
 離婚のための必須条件。二年経っても子を授からないこと。となれば、そういった行為に及んではいけない。
 頭ではわかっているはずなのに、それでも彼を手放したくないと本能が訴えていた。
 ユージーンは自身のことを顧みずにクラリスを助けてくれた。
 毒が必要なクラリスを受け入れてくれた。
 初めて顔を合わせたときから、クラリス自身を認めてくれた。
 くるかわからない不幸に怯えて、今の幸せを手放してもいいのかと、彼は言った。
 いつでもユージーンは、クラリスの欲しい言葉をかけてくれる。
 そうやって考えれば考えるほど、ユージーンを好きだという気持ちが溢れてきた。だけどその言葉を口にできないのは、クラリスの性格でもある。
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