わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 素直になれない。嫌われるのは得意なのに、好かれることには慣れていない。何よりも恥ずかしい。むしろ、毒を欲しがるような女は好かれてはならない。
「……あ、旦那様。蛇さんをあそこに置いてきてしまいました。蛇さんを連れ戻しにいかなければ」
 これから情事に耽ろうとしているのに、そんなことをさらっと口にするのも本心を隠すため。
「問題ない。きっとデリックが連れてきてくれる。それよりも今は、俺を助けてくれ……」
「ですが……」
 クラリスの言葉の続きは、ユージーンの愛に呑み込まれた。
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