わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
エピローグ
 クラリスがファンケにさらわれた事件から一年以上が経った。
 あの事件は、クラリスに想いを寄せていたファンケが金にものを言わせ、人を使って彼女をさらい、無理矢理に自分のものにしようとするのが目的だった。王太子宮にあるサロンに人さらいの男たちが侵入できたのも、あそこで働く侍女を脅したからだ。
 彼女には病気の弟がいて、弟の治療のためには薬が必要だった。クラリスであれば弟のための薬を作れる、断ったら弟の命はないなど、とにかく弟を脅しの道具として利用した。
 その侍女は事件にかかわったことを深く反省し、辞めると言い出したようだが、それを止めたのはクラリス本人だった。そして、その弟の治療薬までをその侍女に与えたのだから、やはり毒女というよりは女神のような存在だろう。
 以前、メイもクラリスは女神のような存在だと口にしていたのを思い出す。
 だが、クラリスにとってはなぜファンケに狙われるようになったのか、心当たりはないとのこと。てっきり彼はハリエッタを好いているものだと思っていたようだ。
 クラリスのことだから、自身に向けられている好意になど気づくはずがない。
 ユージーンだって何度もしつこく愛をささやき、やっと想いが通じたのだ。ときおり、それが重いとすら言われるが。
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