わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 だからファンケがハリエッタを好いていると思い込んでいたのだろう。クラリスは毒師でありアルバートの毒見役として、彼の側に寄り添っていた。そしてアルバートの側にはハリエッタがいた。自分だけは狙われないと思い込んでいるクラリスにとって、ファンケの標的は自動的にハリエッタだと思い込めるのだ。
 婚約披露パーティーの席でハリエッタが手にした飲み物に睡眠薬が混入されていたのも、ハリエッタの飲み物をクラリスが奪い取って飲むだろうとファンケが読んでいたからだ。今までのクラリスの行動からそう判断したらしい。
 そういった先を読む力は褒めてやりたいが、無理矢理、女性を自分のものにしようとする行動はいかんせん許しがたい。
 アルバートとハリエッタの婚約披露パーティー以降、クラリスの姿を見なくなったと思っていたファンケだが、結婚式のために王都へ戻ってきたクラリスの姿をどこかで見かけたようだ。むしろ、結婚式のために王都に戻ってきたことなど彼は知らなかった。
 そしてハリエッタと仲が良いことを思い出し、以前から目をつけていた侍女に話を持ちかけたとのこと。必ずハリエッタはクラリスを誘うだろうと。
 ファンケの読みはあたり、お茶会の真っ最中にクラリスをさらった。
 というのが、あのときの全容である。
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