わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 次の日にファンケの思惑を知ったユージーンが、寝台の上で横になっているクラリスに伝えたのだが、彼女はけしてユージーンの顔を見ようとはしなかった。
 前日に散々、彼女を抱き潰したのは悪かったと思っているが、やっと気持ちが通じて、さらに薬の影響もあったのだから仕方あるまい。と、ユージーンは自身の欲求を正当化していた。
 だからこそクラリスが怒っていたのだが、今となっては夫婦間の戯れである。
「あ、だぁ」
 あのときのことなどなかったかのように、穏やかな時間が流れている。新しい家族も増え、悦びに満たされているのだが、やはりクラリスの姿が見えない。
 あの事件以降、クラリスは解毒薬作りに励んでいる。
「あ、ぶっ……」
 腕の中にいる我が子はかわいい。見ていて飽きない。
 クラリスは自身がそうだったように、子どもも定期的に毒の摂取が必要になるかもしれないと怯えていた。だから彼女は子を望もうとしなかったし、いつかはユージーンと離婚するつもりでいた。
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