わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 もちろんユージーンとクラリスも結婚式に招待されたが、すでにクラリスのお腹は大きくなっていて、お祝いの言葉と品を贈るだけにとどめた。落ち着いたところで、新しい家族も連れ、挨拶にいくつもりだ。
 ユージーンだけでも出席すればよかったのにとクラリスは口にしたが、身重の彼女を一人にしたくないという気持ちもあった。
 そんなユージーンは、もちろんなんだかんだでアルバートに感謝している。
「媚薬が盛られるのがアルバートなのに、なぜデリックから解毒薬を頼まれるんだ?」
「わたくしが作っているのは解毒薬ではございません。特定の異性にしか発情しない薬です」
「すまない。話が飛躍しすぎて、俺には理解できない」
 毒薬や解毒薬にもいろいろな種類や対処法があるようで、ユージーンには理解できないことも多い。
「デリックが両殿下の毒見役なわけですが、最近はなぜか媚薬が多いわけです。そこにどのような陰謀が隠れているのか、わたくしにはわからないところではありますが。デリックには取り込んだ毒薬を無効化する力はございません。少々、効きが悪い程度です。ですから、大量に摂取すると……まあ、そういうことです」
 ちょっとだけデリックに同情を覚えた。何よりも媚薬の効果はユージーンもよくわかっているつもりだ。
「ですが、アルバート殿下が特定の人物にだけ発情する薬を摂取していれば、仮に媚薬が仕込まれたとしても、不特定多数の人物と情事に至らずに済む、というのがデリックの考えです」
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