わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 そしてとうとう、クラリスがウォルター領へとやってくることになった。結婚式の日取りさえ決まっていないというのに、さっさと書類にサインをしてしまえ、というのが国王の思いのようで、もちろんユージーンはそれを断れない。
 クラリスが来たら、結婚誓約書にサインをもらい、まずは書類だけの結婚生活を始めようと、それなりに準備をしていた。それにもかかわらず、肝心のユージーンは魔獣討伐のために城を空けている。
 だからユージーンにかわって、ネイサンがクラリスを迎え入れなければならない。
 本当の彼女は、どのような女性なのか。ユージーンにふさわしくない女性であれば、二年間だけ我慢すればいい。この結婚は離婚前提の離婚約なのだ。
 だが、噂の毒女とは違って淑女であったなら――
 クラリスが到着するのを、ネイサンは今か今かと待っていた。
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