わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 だけどクラリスにはその発想はなかった。会ったこともない将来の旦那様に、なぜか親しみを覚えた。
 断れない結婚であるならば、離婚前提の結婚を受け入れる。ただし、クラリスだって結婚期間の二年間を無駄に過ごしたくはない。そのため、温室を用意してもらないだろうかと、それだけを依頼した。
 するとすぐにユージーンから返事がきた。
 温室は用意する。また、クラリスに好いた男性がいるのであれば、ユージーンとの結婚期間を終えてから、その者と一緒になってほしい――
 だが、残念ながらクラリスに好きな男性はいない。強いて言うならばアルバートであったのに、彼とは離れなくてはならない。
 むしろ、ユージーンには好いた女性がいないのだろうか。いるのであれば、それを理由にこの縁談を断ってくれないだろうかと、そんな淡い期待を込めて、手紙に記す。
 しかし、彼から届いた返事には、好きな女性はいないため縁談を断る理由がない。ようは、断れないと再度書いてきた。そのうえで、この結婚を受けると国王には返事をした、と。
(あぁ……やはり結婚しなければならないのね。だけど、二年間だけ我慢すればいいのよ。二年間、別の土地で学ぶと思えばいいの)
 そうやってクラリスは自身を励ました。
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