わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「陛下は、わたくしたちに結婚しろと命じたわ。ですが、離婚するなとは言っていないって」
 ユージーンとの手紙の内容を、今までにも誰にも伝えていなかった。これを家族に言えば、ユージーンの不名誉が広がってしまうと思ったからだ。だから離婚前提の結婚であることは、クラリスの家族はもちろん知らない。
「ですから、ウォルター伯とわたくしの結婚は、離婚前提の結婚なの。わたくし、二年後には王都に戻れるのよ」
 メイに伝えたのも、今が初めて。
「離婚前提の結婚を離婚約というそうよ。ウォルター伯は物知りなのね」
「え? そうなんですか? 私、クラリス様と一緒にウォルター領に骨を埋める覚悟でついてきたのですが」
「もし、メイが骨を埋めたいのであれば、あなたはそのままそこにいればいいわ。わたくしは王都に戻りますけれども。だって、離婚したのに、いつまでもウォルター伯のお側にいたらおかしいでしょう?」
「でしたら、私もクラリス様と一緒に戻ります。二年間、ウォルター領で快適に過ごしましょう」
 メイはクラリスよりも二つ年下であり、こうやってクラリスを慕ってくれる。だからこそ、ウォルター領へと連れてきたのだが。
「でも、メイも年頃でしょう? 向こうでいい人に出会ったなら、わたくしのことは放っておいて、自分の愛に生きなさい」
「何をおっしゃいますか。私の愛は、クラリス様の側に存在しているのです」
 という、わけのわからない忠誠心までも持ち合わせている。
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