わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 クラリスは今まで魔獣とは無縁の生活を送ってきた。王都に魔獣が現れないのは、ユージーンたちがしっかりと魔獣を食い止めているからだ。
 魔獣が人の住む場所近くに現れたと聞けば、すぐに討伐に向かっているらしい。だから王都に入り込む前に、魔獣は倒される。
「そうなんでしょうね。王都はいろいろなところから守られていた場所よね」
 だからこそ、王都で怖いのは魔獣より人間であった。アルバートの腰巾着とも周囲から言われるくらい、彼にくっついていたクラリスだからこそ、その怖さを身をもって知った。
「王都での生活のようにいかないことも多々あるかもしれないけれど、たった二年間ですもの。それに、ウォルター伯はわたくしのために温室を準備してくださるそうよ」
「まあ、よかったですね」
 たかが温室と思われそうだが、この温室があるとないのとでは、クラリスの生活がガラリと異なる。
「向こうに着いたら、まずは温室に案内してもらわなきゃ。すぐに栽培に取りかかるわね。悪いけれど、メイには荷物の整理をお願いするわ」
「はい」
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