わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「お初にお目にかかります。クラリス・ベネノです」
 スカートの裾をつまみ、挨拶をする。
「こちらが侍女のメイ・ロビン。ところで、ウォルター伯はどちらにいらっしゃるのでしょう?」
「クラリス様もウォルター伯夫人となりますので、どうかユージーン様のことは家名でなく名前でお呼びください。ユージーン様もそれを望まれておりました……あ、自己紹介がまだでした。僕は、ネイサン・ヒルドです。ユージーン様の側近を務めております。そしてこちらが執事のサジェスと侍女頭のアニーです」
 ネイサンの言葉に合わせて、初老の男性とふっくらとした女性が頭を下げる。
「クラリス様、お疲れのところ申し訳ありませんが、先にこちらに署名をいただきたく。おそらく彼らはこれを陛下に出さなければならないのではないでしょうか?」
 それを聞いた護衛兵たちはうんうんと頷いた。
「ユージーン様は、北西の村に魔獣が現れたという報告を受け、二日前に発ってしまいました」
「まあ。大変ですのね」
「クラリス様にお会いできないことを残念がっておりましたが、これだけは準備しておりましたので」
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