わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ハリエッタはクラリスよりも一つ年下で、彼女と結婚を考えているとアルバートから紹介されたときには、脳天に雷が落ちたのではないかというくらい、衝撃が走った。
 しかしクラリスだってベネノ侯爵家の娘。父親は王立騎士団の近衛騎士隊の隊長を務めている。だから、アルバートの側にいてもおかしくはない身分を持ち合わせている。
「わたくしは、殿下のことを思って……」
 誰よりもアルバートのことを考えてきた。その気持ちが彼に伝わっていると思っていた。
「そういった気持ちが迷惑なんだ。いい加減、自分の立場をわかってくれないか?」
 言い方はやさしいが、その視線はひどく冷たい。
「アル様。クラリス様も素敵な殿方と出会えたら、きっと考えを改めてくださると思いますわ」
 口元を扇で隠しながら、ハリエッタがそう言った。
「つまり、クラリスに結婚をしてもらえばいいと?」
「……嫌です」
 クラリスは、ハリエッタが答えるより先に言葉を奪った。
「結婚だなんて、わたくし……。結婚は足枷にしかなりません」
< 4 / 234 >

この作品をシェア

pagetop