わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「長旅でお疲れでしょう。クラリス様と一緒に、まずはゆっくりと休んでください。落ち着いた頃、こちらでの仕事についてアニーから説明があります」
 そう言い残して、ネイサンは部屋から出ていった。
 パタンと扉がしまったのを見届けてから、メイが口を開く。
「……ふぅ。緊張しました」
「ええ、わたくしもよ。あれは歓迎されていると考えてもいいのかしら?」
 毒女と噂されているクラリスを辺境伯夫人と迎えることを受け入れてくれるのだろうか。
「そうですね。敵意は感じませんでした。ただ、クラリス様がどのような人物であるかを探っているかのように思えます」
「そうね。できるだけ彼らとよい関係が築けるように、努力するわ」
「はい。私もこちらの仕事に慣れるように頑張りますね」
 心からメイがいてよかったと、クラリスは思っていた。
 そこで扉が叩かれ、アニーがティーワゴンを押しながら部屋へと入ってきた。
「ありがとう、アニー。ちょうど喉が渇いていたところです」
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