わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 そんな危険生物たちであるが、クラリスにとっては特に毒を持つ危険生物はまたとない獲物であった。
「いいですか? ネイサン。わたくしがあの蛇を引き寄せている間に、あの人たちを地上へと連れていってください」
「ですが、奥様」
「わたくしはここの女主人です。旦那様が不在の今、わたくしの言うことを黙ってききなさい」
 クラリスがピシャリと言い放つと、ネイサンも諦めたようだ。
 シンと静まり返った地下室内で、クラリスがスカートをたくし上げて、太ももにくくりつけていたレッグホルスターから小瓶を取り出した。
「奥様、それは?」
「蛇が好む匂いです。この匂いで蛇をわたくしに惹きつけますから、その間に……」
 すべてを言い終わらぬうちにネイサンは頷いた。
 小瓶の蓋を開けると、とぐろを巻いていた蛇がチロチロと舌を出して反応し始める。ずりずりと身体を伸ばして、クラリスのほうへと近づいてくる。
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