わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 その隙にネイサンが座り込んでいた女性の手を掴んで引っ張り上げ、外に出るようにと促す。手を噛まれたであろう男性も、ネイサンに従って地下室から出ていく。
 二人の姿を横目で確認しつつ、クラリスは匂いにつられて近づいてきた蛇の頭を勢いよく掴んだ。
「奥様!」
「大丈夫です。心配ありません。ですが、蛇を入れるための瓶か何かがあるといいのですが」
 ぐるりと地下室内を見回すクラリスだが、今日、来たばかりの場所であるためどこに何があるのかなどさっぱりわからない。
 ネイサンは蛇に怯んでいた男女が地下室から出たのを見届けると、棚の一番下にあった空の瓶を両手に抱えて持ってきた。
「奥様、この瓶をお使いください」
「ありがとう」
 瓶に蛇を押し込めたクラリスは、きゅきゅっと蓋をきつくしめた。
「あ、あの方。蛇に噛まれていましたよね。はやく毒を抜かなければ」
 クラリスが蛇の入った瓶を腕に抱きかかえながら、階段を上がろうとすると、ネイサンがその瓶を奪って先に階段を上がっていく。
 階段を上がったところでは、先ほどの男女がへなへなと座り込んでいた。
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