わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 噛まれた場所が腫れていたので、いくら毒を吸い出し薬を塗ったとしても、これから毒による拒絶反応が出るかもしれない。だから、できるだけ安静にしておいたほうがいい。
「あなたは大丈夫ですか?」
 へたりと座り込んでいる女性に視線を向けたクラリスが声をかけると、彼女は「は、はい」と返事をする。
「あ、あの。ありがとうございました」
「あなたのお名前を聞いてもいいかしら?」
「あ、はい。メイドのリサです」
「そう。リサは蛇に噛まれていませんね?」
「はい。エイベルが助けてくれたから、大丈夫です。あ、私、仕事の途中でしたので……」
 落ち着きを取り戻したリサは、なんとか立ち上がる。
「地下にいたのも、お仕事のためかしら?」
「はい。奥様が来られたので、料理長が腕によりをかけて夕食を準備されるとのことで、その材料をとりに……あ、奥様には内緒でと言われていたのに……」
「気にしないでリサ。わたくしは何も聞いておりませんよ」
 クラリスが口の前で右手の人差し指を立てて「内緒よ」と合図を送れば、リサの顔もみるみるうちに赤くなる。
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