わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「……奥様」
「は、はひっ」
「どちらへ行かれるのですか? 毒蛇を持って」
「あ、温室に戻ろうかと思っております。せっかく温室を用意していただきましたし、植えたいものがありまして……は、はははは……」
 最後は乾いた笑いで誤魔化してみたが、ネイサンの目が怖い。
「奥様、僕の質問に答えていただきたいのですが」
「え、えぇ……答えられる範囲でお答えします」
 二年間の付き合いだからこそ、必要最小限の付き合いにしようと思っていた。それなのに、初日からこんなことになるとは予想外である。
 すべてはこの毒蛇が悪い。
「奥様は毒蛇に慣れていらっしゃるようですが?」
「わたくしは、王城で薬師として働いておりましたので、毒蛇などにも慣れております。他にも毒を持つ植物や小動物、虫などもよく手にしておりましたので」
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