わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 それでもクラリスを危険な目に合わせてはならない。しかし、クラリスに「従いなさい」と命じられたらネイサンだって逆らえない。
 そうこうしているうちに、クラリスがスカートの裾を大きくたくし上げ、いつの間にか何かの小瓶を手にしていた。蛇が好む匂いが閉じ込められている瓶とのこと。
 冷静に考えて、普通の令嬢であれば、蛇が好む匂いの瓶など持っていないだろう。それも彼女は、文字通り肌身離さず身に付けていたのだ。
 この時点でネイサンの頭は、やや混乱していた。突っ込むべき要素は、多々あった。
 それでもエイベルとリサを助けるのが最優先だ。二人を毒蛇から引き離したと思ったら、今度はなぜかクラリスが蛇を素手で捕まえていたのだ。
 ネイサンは夢でも見ているのかと思った。令嬢が素手で毒蛇を捕まえている。この光景は、何かがおかしい。だから、夢ではないのかと疑った。
 クラリスは蛇を閉じ込めるための瓶が欲しいと言った。蛇はすばしっこいため、きちっと何かに閉じ込めておかなければするすると逃げてしまう。逃げた先が森の中などであればいいのだが、また建物内に入られたら同じことの繰り返しである。
 だから瓶に蛇を入れ、裏の森に帰すのだろうと思った。
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