わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 先ほどからクラリスは口元がゆるみっぱなしである。
 彼女から手紙を受け取ったネイサンは、一文字一文字見逃すまいと、じっくりと読む。
 結果、クラリスが言っていたことは本当であった。ユージーンは、クラリスが一人で森の中に入るのは危険だから駄目だときっぱりと書いたうえで、護衛のために兵をつけるなら森へ行き、薬の材料となるものを採ってもいいとのこと。
 ユージーンもクラリスが薬師であったことを知らなかったようだ。国王が選んだ相手というのもあって、そういった細かいところの調査が漏れていた。
 だが今のところ、クラリスはウォルター領を害する存在ではない。
 ただ、危険だといわれる森へ入りたがったり、毒蛇を素手で捕まえたりと、普通の令嬢ではしないようなことをすんなりとこなす。
 ネイサンは、それが気になっていた。
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