わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
第三章:夫 x 夫 x 夫
 ユージーンは気が急いていた。魔獣を一掃し「領地に戻れるから」というのが大きな理由であるが、「なぜ領地に戻りたいのか」と問われれば「まだ会ったことのない妻に会いたいから」である。
 国王からクラリス・ベネノとの結婚を命じられたときは、いろいろと考え悩んだものだ。
 だというのに、彼女がフラミル城へやってくる数日前、魔獣討伐のためにユージーンは領地から離れた。
 それから二ヶ月間、北西の村に滞在し、次から次へと現れる魔獣を倒した。しかし魔獣は、倒したと思っても数日後にまたすぐに現れる。それを繰り返し、十日ほど魔獣が現れない時期を確認してからの撤退となった。
 十日間、魔獣の姿を見ない。
 それが魔獣討伐を終えたと判断するための一つの指標になっていた。
 ユージーンは、魔獣討伐で遠征するときには、独身の者を中心に人を選ぶ。もしくは、妻子持ちであっても本人が希望すればそれなりに対応する。
 というのも、魔獣討伐とはそれだけ危険な任務。怪我をするときもあるし、下手をすればその命すら魔獣に奪われることもある。
 幸いなことに、ユージーンが魔獣討伐団の団長を務めてから、魔獣によって命を落とした者はいない。ただ、毎回のことながら、怪我人はそれなりに出る。
 ユージーンが二十六歳になっても独身であるのは、この魔獣討伐というのも理由の一つであった。魔獣討伐のため領地を離れることが多く、社交の場に参加もなかなかできない。ようは、他の男性と比べると、出会いが極端に少ない。
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