わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「こちらは蛇の毒です。蛇の血と毒を混ぜたものになります」
耳に入ってきた言葉であるが、それを理解するのを本能が拒んでいる。
「蛇の毒? もしかして先ほどの?」
「あ、先ほどは慌てていたとはいえ、見苦しいものをお見せして申し訳ありませんでした。ですが、こちらの毒は先ほどの蛇ではなく、十日ほど前に採取し、そこから……」
クラリスの声が右耳から左耳へと通り過ぎていく。鈴が転がるような声は聞こえているが、やはり理解ができない。
助けを求めてネイサンを見やると、彼は首を横に振った。
しかしネイサンは、すかさずクラリスに近づき、何やら耳元でささやく。
クラリスの紫紺の目が大きく開き、小さく頷いていた。
「あの……やはり旦那様は、わたくしが毒師であることをご存知ないのでしょうか?」
毒師――毒を扱う術師。
ユージーンにはそれだけの知識しかない。そして彼女が毒師であるとは聞いていない。けれども、すんなりと納得できた。腑に落ちたとも言う。
毒蛇を恐れることなく二匹も掴んでいたのだ。毒師であれば、毒蛇など怖くないのだろう。他にも蜘蛛や蝶、カエル、蜂など、毒をもつ生き物はたくさんいる。
耳に入ってきた言葉であるが、それを理解するのを本能が拒んでいる。
「蛇の毒? もしかして先ほどの?」
「あ、先ほどは慌てていたとはいえ、見苦しいものをお見せして申し訳ありませんでした。ですが、こちらの毒は先ほどの蛇ではなく、十日ほど前に採取し、そこから……」
クラリスの声が右耳から左耳へと通り過ぎていく。鈴が転がるような声は聞こえているが、やはり理解ができない。
助けを求めてネイサンを見やると、彼は首を横に振った。
しかしネイサンは、すかさずクラリスに近づき、何やら耳元でささやく。
クラリスの紫紺の目が大きく開き、小さく頷いていた。
「あの……やはり旦那様は、わたくしが毒師であることをご存知ないのでしょうか?」
毒師――毒を扱う術師。
ユージーンにはそれだけの知識しかない。そして彼女が毒師であるとは聞いていない。けれども、すんなりと納得できた。腑に落ちたとも言う。
毒蛇を恐れることなく二匹も掴んでいたのだ。毒師であれば、毒蛇など怖くないのだろう。他にも蜘蛛や蝶、カエル、蜂など、毒をもつ生き物はたくさんいる。