わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ユージーンは一度執務室に足を運び、ネイサンとサジェスから、不在の間の様子を、簡単に報告を受けた。やはり、クラリスがやってきたことが大きな変化であるものの、彼女が来たことで問題が発生しているわけでもない。
「奥様は、よくやってくださっております」
 特にサジェスにいたっては、クラリスの信望者にまでなりつつある。心からユージーンとクラリスの結婚を喜んでいるようで、結婚式をどうするかをそろそろ決めたい、とのことだった。
 ユージーンも魔獣討伐から戻ってきたことだし、すぐにベネノ侯爵に手紙を送り結婚式の段取りについて相談する、とサジェスに言えば、彼は鷹揚に頷いた。
 それからサジェスには、魔獣討伐団が無事に帰還したため、慰労パーティーの手配をするようにと指示を出す。そうすれば、サジェスが抜かりなく段取りをしてくれるはず。
 サジェスを下がらせ、今度はネイサンから話を聞く。
 城の切り盛りについてはサジェスから聞くのが一番であるが、兵のことやら街の様子を確認するのであれば。ネイサンほど適した人間はいない。
「お前から見て、どう思う?」
 ユージーンが唐突に尋ねると「何がですか?」とネイサンからはとぼけた答えが返ってきた。
「彼女のことだ」
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