わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「彼女ってどなたです?」
 ネイサンは知っててそう聞いているのだ。
「クラリスだ」
 少しだけつっけんどんに返すと、ネイサンがにたりと笑った。
「ユージーン様、後悔してますよね?」
「な、なにがだ」
「奥様に離婚約を申し込んだこと」
「それは……」
 ネイサンはどうやらお見通しのようだった、いや、あのとき「惚れた」とユージーンが声高々に宣言したのだから、気持ちは知られているのだろう。
「僕から見ましても、奥様はユージーン様にとって理想の女性です」
 ネイサンの言葉に、なぜかユージーンの頬がゆるんだ。
「そ、そうか……この結婚話を打診されたときは、彼女をさんざん毒女だと言ってけなしていたお前がそう言葉にするくらいなのだから、確かなんだろうな」
 誰に言うわけでもなく、ユージーンはぽつんと呟いた。
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