わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「その件に関しては、僕からも奥様にきちんと謝罪しております。やはり僕たちは、噂と上辺だけを信じて、奥様を偏見の目で見ていたようです」
「そうか……お前がそう言うなら……そうなんだろうな」
 クラリスがネイサンに認められたのが、なぜか嬉しかった。
「それでだ、ネイサン。相談があるんだが……」
 ユージーンはネイサンを信頼している。だから側に置き、留守の間の領地と民を任せているのだ。
「なんでしょう?」
「クラリスとの結婚生活を続けていくためには、どうしたらいい?」
 パチパチとネイサンが目を瞬いた。まるで夢でも見ているのでは、とでも言うかのように何度もまばたきをする。
「ユージーン様は、奥様と別れたくないと?」
「先ほどからそう言っているだろう? だが、離婚前提で結婚してしまった以上、こちらも誠意を見せねばと思ってだな。黙って二年後に、やはり離婚はしない、と言い出すのは卑怯ではないかと思ったんだ」
「なるほど。でしたら、身体から落とせばいいのでは? と言いたいところですが、そもそも離婚前提の結婚を打診した時点でユージーン様はクズですので、ここでいきなり襲ってはもっとクズになります。とことんクズ男を貫く方針であるならば、お止めはしませんが、やはりきちんと気持ちを伝えるべきだと思います」
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