わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
どうやらクラリスは、メイとカロンを連れて、毎日、裏の森へ足を伸ばしているらしい。てっきり庭園を散歩しているのかと思っていたら、散歩が散策にかわっていたのだ。
それに、カロンも言うように、毎日、裏の森に行くのはどうかと思う。ただでさえ、近づいてはならぬ場所。他の者への示しがつかない。いや、他の者から希有の目で見られてしまうだろう。
「奥様。毎日、裏の森へと行っているようですが……」
「ええ、きちんとカロンにもついてきてもらっているし、約束は守っております」
「そのカロンから相談されたのです」
相談ではなく「苦情」と言おうかと思ったのだが、こうやって間を取り持つのもネイサンの役目でもある。苦情と口にしたことで、二人の間に見えない壁ができるのも避けたい。だからあえて「相談」と言ったのだ。
「……まあ、そうだったのですね。何も言わないから……カロンには悪いことをしました」
「いえ、カロンも奥様が楽しそうにされているのに、自分のせいでその楽しみを奪ってしまうのではと、気にしていたのです」
「そんなに裏の森は、嫌われているのかしら?」
「嫌われているというよりは、危険だからです。奥様は毒について熟知されているようですが、カロンはそうでもありません。ただ、奥様に危険が迫ったときにお守りする、そういった立場の者ですから、なおさら気が気ではないのでしょう」
それに、カロンも言うように、毎日、裏の森に行くのはどうかと思う。ただでさえ、近づいてはならぬ場所。他の者への示しがつかない。いや、他の者から希有の目で見られてしまうだろう。
「奥様。毎日、裏の森へと行っているようですが……」
「ええ、きちんとカロンにもついてきてもらっているし、約束は守っております」
「そのカロンから相談されたのです」
相談ではなく「苦情」と言おうかと思ったのだが、こうやって間を取り持つのもネイサンの役目でもある。苦情と口にしたことで、二人の間に見えない壁ができるのも避けたい。だからあえて「相談」と言ったのだ。
「……まあ、そうだったのですね。何も言わないから……カロンには悪いことをしました」
「いえ、カロンも奥様が楽しそうにされているのに、自分のせいでその楽しみを奪ってしまうのではと、気にしていたのです」
「そんなに裏の森は、嫌われているのかしら?」
「嫌われているというよりは、危険だからです。奥様は毒について熟知されているようですが、カロンはそうでもありません。ただ、奥様に危険が迫ったときにお守りする、そういった立場の者ですから、なおさら気が気ではないのでしょう」