空でのこと。
俺は、飛行機に乗っていた。
なかなか落ち着かないし、正直、無茶苦茶
嫌な気分だ。
なぜなら、俺の今回の仕事は、クライアントに
故障する可能性の高い商品を売りつけることだ
からだ。
もちろん、当初、俺は反対したが、上司に直訴
したところ、これは社命だということだった。
だから、俺は気分が乗らない。
するとCAが、近づいて来た。
「お客様。飴でもいかがでしょうか?」
「いらん!」
俺は、気が立っていたせいか、つい強い口調で
はねのけてしまった。
「大変、失礼いたしました」
CAは、謝罪した。
”申し訳ない・・・”
俺は、その時思った。
ややあって。
また、CAが近寄ってきた。
「お客様。機内が冷えてまいりましたので、この毛布
はいかがでしょうか?」
「あと、ワインはお好きでしょうか?」
「あ、あぁ、好きだけれど・・・・・・」
「白ワインは、いかがでしょうか? さっぱりとしたお味
でございます」
「そうか。じゃぁ、毛布とワインを頼む」
「承知いたしました」
しばらくして。
「お客様。毛布とこちらの白ワインをお持ちいたしました」
「あ、ありがとう」
「どうぞ、御くつろぎください」
俺は、毛布を胸まで持ってきて、白ワインを一口飲んだ。
その瞬間、体中の緊張がほぐれていくような気がした。
CAが、また近づいてきた。
「CAさん。良いものをありがとう」
「いえいえ。申し訳ございませんでした。こちらの配慮不足
でした」
「い、いえ。そんなことはありません」
「ありがとうございます。お口直しに、先ほどの飴はいかがで
しょうか?」
「ありがとう。頂いておくよ」
「どうぞ」
CAが、そっと飴を渡してくれた。
俺は、飴をなめた。
口の中一杯に、甘酸っぱい香りが広がった。
「美味しいよ。この飴」
「ありがとうございます。それでは、良い旅を」
俺は、機内から窓の外を見た。
太陽が、まぶしかった。