わたしのせいしゅんものがたり
お昼休み。
仲良し4人組で食べていると、教室の外をうろうろしている男子が一人。ガラス越しにこちらの様子を伺っている。よく見ると大桃だった。梨沙と目が合うと少し照れ笑いをした。
「あ、あれは」
「ん、何?あれって!あれがもしかしたら大桃?ストーカーかよ」
穂乃香が言う。
「ももち、出待ちされてるね」
「うん、まるでアイドルの出待ちだね」
瑠奈もまおみも言う。
他の生徒も気づいてこちらへ寄ってきた。一人の生徒が
「あれは大桃くんだよ。私中学で同じクラスだったんだ」
と言って教室の外に向かって「大桃くーん、どうしたの?」と叫んだ。そしたら恥ずかしくなったのか、階段の踊り場まで去っていってしまった。
「私、行ってくる」
梨沙はお弁当を片付けて、階段の踊り場へと向かった。
「ごめんね、なんか待ってたみたいで」
「ああ、大丈夫だよ。みんなに見られたっておかしくないくらい俺、不審なかんじだったし」
「そんなことはないと思うけど。ところでどうしたの?」
「小峰さんのことについて話に来たんだ」
二人は踊り場で話し始めた。
「君にとっては初めましてかもしれないけど、俺にとってはそうじゃないんだ。去年の中学の夏休みのときにここの高校のオープンスクールがあったでしょ?あのとき鉄道研究部に行こうとしてる君を見かけた。リュックに今の鞄にさげてる京浜東北線のパスモケースをさげてて女子なのに鉄道が好きなんだなあって思った」
「それで私のことを知ってたんだね」
「うん。それから2月にクラス編成試験があったでしょ?あのとき同じ教室で試験を受けてたんだよ」
「え?そうだったの?」
「パスモケースで例の子だってすぐわかった」
「そんなに会ってたなんて…」
正直梨沙は大桃のことは知らなかった。でも大桃は梨沙のことを半年以上前から知ってたのだ。
「ところで小峰さんはどこに住んでるの?」
「ああ、秦野だよ。電車通学なんだ」
「そっか。俺は開成。近いから自転車通学だよ」
そこまで話したところでチャイムが鳴った。
「じゃあまた」
「うん、連絡待ってるから」
不思議な関係が生まれようとしていた。