顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。
1.人気な妹
お母様に似た私は、目つきが悪かった。
こういう言い方をするのは、お母様に失礼なのかもしれないが、どちらかというと悪役のような顔をしている。なんというか、威圧感があるのだ。
実際に私は、怖がられることが多い。そんなつもりはまったくないのだが、よく怒っているとか機嫌が悪いとか思われるのだ。
一方で、私の妹であるルルメリーナは、とても柔和な顔をしている。
それは恐らく、美少年と評判だったお父様に似たからだろう。お母様も容姿自体は端麗であるため、その二人の要素を受け継いだルルメリーナは、とても可愛らしくなったのだ。
私と違って、ルルメリーナは社交界でも大人気である。
つまり彼女の容姿は、身内である私の贔屓目を抜きにしても、多くの人に好かれるものであるということだ。
ただ、彼女は人気過ぎるといえるのかもしれない。
傾国の美少女とでもいうべきだろうか。ルルメリーナは、様々な男性を狂わせる程に人気があるのだ。実際に、彼女に惚れたことで人生が狂った男性を、私は何名か知っている。
そういった面において、ルルメリーナは危険人物ともされることも多い。
彼女を好いているかどうかは、その立場によって大きく異なっているといえるだろう。例えば、恋敵などからは忌み嫌われている訳だし。
「あなたのせいで、私の婚約者は狂ってしまったのよ! 私との婚約を破棄して、あなたに求婚するなんて……」
とある舞踏会で、私は正にその現場に遭遇することになった。
ルルメリーナの前にいる令嬢は、すごい剣幕で言葉を放っている。その言動の節々からは、妹への怒りや憎悪という感情が伝わってくる。
「あのぉ、それって私のせいなんですかぁ?」
「なっ……!」
それに対して、ルルメリーナは非常に相手を逆撫でする言葉を発した。
ただ、恐らくそれは悪意があっての言葉ではない。あの妹は、きっと純粋に疑問を覚えているのだ。
「あなたのせいでなければ、誰のせいだというのよ!」
「私、何もしていません。あなたの婚約者が誰なのかもわからないんですけど……」
「オルバット子爵家のグラント様よ。知っているでしょう?」
「うーん。聞いたことはありますけど、別に特別親しくした覚えはありません。私からは、勝手に惚れられたとしか言えませんねぇ」
ルルメリーナは、困ったという顔をして頬に手を当てていた。
それが令嬢にとっては、腹立たしいものだったようだ。彼女の顔は、ひどく強張っている。
「あなたみたいな最低な女はっ……!」
「……待ってもらおうか」
「え?」
令嬢はルルメリーナに、手を上げようとしていた。
しかし、それはすぐに止められた。私達のお兄様ラヴェルグが、令嬢が振り上げた手を掴み取ったのである。
こういう言い方をするのは、お母様に失礼なのかもしれないが、どちらかというと悪役のような顔をしている。なんというか、威圧感があるのだ。
実際に私は、怖がられることが多い。そんなつもりはまったくないのだが、よく怒っているとか機嫌が悪いとか思われるのだ。
一方で、私の妹であるルルメリーナは、とても柔和な顔をしている。
それは恐らく、美少年と評判だったお父様に似たからだろう。お母様も容姿自体は端麗であるため、その二人の要素を受け継いだルルメリーナは、とても可愛らしくなったのだ。
私と違って、ルルメリーナは社交界でも大人気である。
つまり彼女の容姿は、身内である私の贔屓目を抜きにしても、多くの人に好かれるものであるということだ。
ただ、彼女は人気過ぎるといえるのかもしれない。
傾国の美少女とでもいうべきだろうか。ルルメリーナは、様々な男性を狂わせる程に人気があるのだ。実際に、彼女に惚れたことで人生が狂った男性を、私は何名か知っている。
そういった面において、ルルメリーナは危険人物ともされることも多い。
彼女を好いているかどうかは、その立場によって大きく異なっているといえるだろう。例えば、恋敵などからは忌み嫌われている訳だし。
「あなたのせいで、私の婚約者は狂ってしまったのよ! 私との婚約を破棄して、あなたに求婚するなんて……」
とある舞踏会で、私は正にその現場に遭遇することになった。
ルルメリーナの前にいる令嬢は、すごい剣幕で言葉を放っている。その言動の節々からは、妹への怒りや憎悪という感情が伝わってくる。
「あのぉ、それって私のせいなんですかぁ?」
「なっ……!」
それに対して、ルルメリーナは非常に相手を逆撫でする言葉を発した。
ただ、恐らくそれは悪意があっての言葉ではない。あの妹は、きっと純粋に疑問を覚えているのだ。
「あなたのせいでなければ、誰のせいだというのよ!」
「私、何もしていません。あなたの婚約者が誰なのかもわからないんですけど……」
「オルバット子爵家のグラント様よ。知っているでしょう?」
「うーん。聞いたことはありますけど、別に特別親しくした覚えはありません。私からは、勝手に惚れられたとしか言えませんねぇ」
ルルメリーナは、困ったという顔をして頬に手を当てていた。
それが令嬢にとっては、腹立たしいものだったようだ。彼女の顔は、ひどく強張っている。
「あなたみたいな最低な女はっ……!」
「……待ってもらおうか」
「え?」
令嬢はルルメリーナに、手を上げようとしていた。
しかし、それはすぐに止められた。私達のお兄様ラヴェルグが、令嬢が振り上げた手を掴み取ったのである。
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