顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。

20.一応の作戦会議(モブ視点)

 ノルードとネセリアの二人は、ルルメリーナの部屋に来ていた。
 一応三人は、ラスタリア伯爵家の利益のための計画をこなしている。そのため、こうして作戦会議をするように心掛けているのだ。

 といっても、今回の計画の肝はルルメリーナの天然に頼ったものである。そのため、具体的な作戦は立てられない。
 それなのにどうして集まっているのかというと、それはルルメリーナにこれが作戦の途中であることを思い出させるためだ。
 そうしなければ、彼女はそれを忘れてしまいかねない。それは一応まずいため、ノルードとネセリアはそれらしいことを言っている。

「まあ、今回のルルメリーナ様のミスは、結果としてはウェディバー伯爵家を翻弄させられているといえるでしょうね」
「え? そうなの?」
「ええ、不幸中の幸いといえるでしょうか。あの二人の間に軋轢が生まれるということは、隙を生み出すことに繋がります」
「へー、そうなんだ」

 ノルードの言葉に、ルルメリーナは呑気にお菓子を食べていた。
 右から左に抜けていることを感じながらも、ノルードはネセリアに目配せしておく。彼女の方からは、色々と報告があるのだ。

「ウェディバー伯爵家の次男であるイルヴァドは、現在ラスタリア伯爵家を訪ねているそうです」
「ラスタリア伯爵家を? どうして? 旅行だって、あの二人は言っていたけど……」
「彼はどうやら、あの二人の失脚を狙っているようです。ウェディバー伯爵を継ぎたいと強く思っているようですね」
「そうなんだ。野心家? みたいな感じぃ?」

 ネセリアの話には、流石のルルメリーナも興味を持ったようだった。
 それにネセリアは、安心したようにため息をついていた。これで話が早くなると思ったのだろう。ノルードはその様に苦笑いを浮かべていた。

「彼の方にも、色々と事情があるみたいです。ラスタリア伯爵家――つまりは奥様や旦那様は、イルヴァド様に協力することを決めたようですね。その方が利益があると思っているようです」
「ふーん。それじゃあ、私は何をすればいいのぉ?」
「それは今までと変わりません。ルルメリーナ様は、こちらで普通に過ごしてください。その間に私が色々と調べておきますから、囮役をお願いします」
「囮役って、なんかかっこいいよねぇ」
「ええ、そうですね」

 ルルメリーナは少し胸を張っていた。
 それに対して、ネセリアは苦笑いを浮かべている。ルルメリーナに自分の言葉がきちんと届いたのか、不安なのだろう。
 それを見ながら、ノルードはゆっくりとため息をつくのだった。
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