顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。
27.彼女がいない間に(モブ視点)
ルルメリーナが一度里帰りしたいということで、彼女はウェディバー伯爵家から去っていた。
ホームシックなのだろう。アデルバは彼女の行動について、そのように軽く捉えていた。
それはカルメアも同じだった。彼女からしてみれば、鬱陶しいルルメリーナがいなくなったというだけで喜ぶべき事柄であり、それ以外のことはあまり気にならなかったのである。
「事情聴取ですって?」
「ええ」
そんなウェディバー伯爵家の元に、王都から遣いの男性がやって来た。
その者は、王家からの遣いである。そんな者が訪ねて来ることは、それ程多いことではないため、アデルバもカルメアも驚いていた。
しかも、その目的が事情聴取といういささか穏やかではないことであったため、二人はそれなりに動揺していた。何故そのようなことを言われるのか、まったくわからないのだ。
「……失礼ながら、どうしてこのウェディバー伯爵家が事情聴取などというものを受けなければならないのでしょうか? 我々は、何もしていませんよ? 事件にも関わっていません」
「最近、ウェディバー伯爵家の動向がおかしいと国王様は判断されたようです」
「おかしいことなど、何もないと思いますが……」
アデルバの言葉に、遣いは淡々とした言葉を返してきていた。
しかしその内容は抽象的であり、アデルバはまだいまいちピンと来ていない。
一方で、カルメアの方はその表情を強張らせている。彼女には、何かしらの覚えがあるということだ。
「最近、ウェディバー伯爵家は武器を発注しましたね? その武器の発注が、大量だったと聞いています」
「それは……」
遣いの決定的な言葉に、アデルバは母親の方を見た。
すると、彼女は鋭い視線を返してきた。それにアデルバは、少し怯んでしまう。
「言っておきますが、あれは単純な発注ミスというものです。桁を一つ間違えるなんて、誰にでもあることでしょう」
「大量であるならばともかく、百と千を間違えることがあるか、国王様はそのように考えていらっしゃるようです」
「あれは……その、婚約者がやったことだ。彼女はここに来たばかりで、色々と慣れていなかった。その緊張からミスをしたのだ。そういうこともあるだろう」
遣いの言葉に、アデルバは必死に反論した。しかしながら、その反論がそれ程響くものではないということは、彼もわかっている。
しかし、この段階に至っても、アデルバは問題をそれ程重く捉えていなかった。武器の発注ミスを一度したくらいで、裁かれることなどはあり得ないからだ。
ただ彼は、先程から母親がしている苦い顔が気になっていた。それはまるで、この状況がとても悪い状況であることを表しているかのようだったからだ。
ホームシックなのだろう。アデルバは彼女の行動について、そのように軽く捉えていた。
それはカルメアも同じだった。彼女からしてみれば、鬱陶しいルルメリーナがいなくなったというだけで喜ぶべき事柄であり、それ以外のことはあまり気にならなかったのである。
「事情聴取ですって?」
「ええ」
そんなウェディバー伯爵家の元に、王都から遣いの男性がやって来た。
その者は、王家からの遣いである。そんな者が訪ねて来ることは、それ程多いことではないため、アデルバもカルメアも驚いていた。
しかも、その目的が事情聴取といういささか穏やかではないことであったため、二人はそれなりに動揺していた。何故そのようなことを言われるのか、まったくわからないのだ。
「……失礼ながら、どうしてこのウェディバー伯爵家が事情聴取などというものを受けなければならないのでしょうか? 我々は、何もしていませんよ? 事件にも関わっていません」
「最近、ウェディバー伯爵家の動向がおかしいと国王様は判断されたようです」
「おかしいことなど、何もないと思いますが……」
アデルバの言葉に、遣いは淡々とした言葉を返してきていた。
しかしその内容は抽象的であり、アデルバはまだいまいちピンと来ていない。
一方で、カルメアの方はその表情を強張らせている。彼女には、何かしらの覚えがあるということだ。
「最近、ウェディバー伯爵家は武器を発注しましたね? その武器の発注が、大量だったと聞いています」
「それは……」
遣いの決定的な言葉に、アデルバは母親の方を見た。
すると、彼女は鋭い視線を返してきた。それにアデルバは、少し怯んでしまう。
「言っておきますが、あれは単純な発注ミスというものです。桁を一つ間違えるなんて、誰にでもあることでしょう」
「大量であるならばともかく、百と千を間違えることがあるか、国王様はそのように考えていらっしゃるようです」
「あれは……その、婚約者がやったことだ。彼女はここに来たばかりで、色々と慣れていなかった。その緊張からミスをしたのだ。そういうこともあるだろう」
遣いの言葉に、アデルバは必死に反論した。しかしながら、その反論がそれ程響くものではないということは、彼もわかっている。
しかし、この段階に至っても、アデルバは問題をそれ程重く捉えていなかった。武器の発注ミスを一度したくらいで、裁かれることなどはあり得ないからだ。
ただ彼は、先程から母親がしている苦い顔が気になっていた。それはまるで、この状況がとても悪い状況であることを表しているかのようだったからだ。