顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。
33.残された手紙(モブ視点)
「……アデルバ」
「母上? どうかされたのですか?」
ドナール侯爵の元から失意のままに帰って来たアデルバは、出迎えてくれた母親の表情に少し面食らっていた。
目の前のカルメアは眉をひそめて、アデルバのことを睨みつけている。その厳しい視線からは、確かな怒りが読み取れる。
しかし、ドナール侯爵とのことはまだ報告していないため、アデルバは彼女が何について怒っているかわかっていなかった。彼からしてみれば、まったく見当がつかないのである。
「これを見なさい」
「これは手紙、ですか?」
「あの女が残した手紙です」
「ルルメリーナが、ですか……これは!」
母親から渡された手紙を見ながら、アデルバは固まることになった。
それは、婚約者であるルルメリーナからの手紙だ。その手紙には、アデルバとの婚約を破棄するという旨が記されている。
「んなっ……」
「あの女は、どこまでも自分勝手な女のようね。あなたも見る目がない……」
最愛のルルメリーナからの突然の婚約破棄に、アデルバは目を丸めていた。
それを見ながら、彼は思い出す。自分がルルメリーナに、何を渡したのかということを。
「アデルバ? どうかしたのかしら?」
「あ、あの女、まさか最初からそのつもりで……」
「アデルバ、私の質問に答えなさい。あなたは一体、何をしたの?」
ルルメリーナにベタ惚れしていたアデルバでも、流石に彼女に踊らされていたというは、理解することができた。
どこまでが計画の内だったのかは定かではないが、少なくとも自分から権利書を奪い取ることは、目的の一つだったとアデルバは理解する。
「アデルバ、何度言ったらわかるのかしら? 私の質問に答えない」
「母上……僕は、何もしていません。何もしていませんとも」
母親からの追及に、アデルバはゆっくりと首を横に振った。
彼は犯した過ちを、母親に打ち明けることなどできなかった。そんなことをしたら、どれだけの怒りを向けられるか、わかっていたからだ。
しかしその判断は、状況を先送りにしているだけである。何れはわかることだ。
だが、それでもアデルバの口からは何も出なかった。それをカルメアは、訝し気に見つめている。
「……とにかく、今回の件についてはラスタリア伯爵家に抗議します」
「こ、抗議、ですか?」
「あの無能な女を婚約者として渡してきたのですから、その補填をしてもらわなければなりません。婚約破棄までしたのですから、義はこちらにあります」
「そ、それは……」
カルメアは、アデルバが婚約破棄されて落ち込んだなどと判断したようだった。
彼女は彼女の方で、話を進めている。ただそれらの言葉は、アデルバの耳に入ってこなかった。彼の頭の中は、自分が犯したミスに関することでいっぱいだったのだ。
「母上? どうかされたのですか?」
ドナール侯爵の元から失意のままに帰って来たアデルバは、出迎えてくれた母親の表情に少し面食らっていた。
目の前のカルメアは眉をひそめて、アデルバのことを睨みつけている。その厳しい視線からは、確かな怒りが読み取れる。
しかし、ドナール侯爵とのことはまだ報告していないため、アデルバは彼女が何について怒っているかわかっていなかった。彼からしてみれば、まったく見当がつかないのである。
「これを見なさい」
「これは手紙、ですか?」
「あの女が残した手紙です」
「ルルメリーナが、ですか……これは!」
母親から渡された手紙を見ながら、アデルバは固まることになった。
それは、婚約者であるルルメリーナからの手紙だ。その手紙には、アデルバとの婚約を破棄するという旨が記されている。
「んなっ……」
「あの女は、どこまでも自分勝手な女のようね。あなたも見る目がない……」
最愛のルルメリーナからの突然の婚約破棄に、アデルバは目を丸めていた。
それを見ながら、彼は思い出す。自分がルルメリーナに、何を渡したのかということを。
「アデルバ? どうかしたのかしら?」
「あ、あの女、まさか最初からそのつもりで……」
「アデルバ、私の質問に答えなさい。あなたは一体、何をしたの?」
ルルメリーナにベタ惚れしていたアデルバでも、流石に彼女に踊らされていたというは、理解することができた。
どこまでが計画の内だったのかは定かではないが、少なくとも自分から権利書を奪い取ることは、目的の一つだったとアデルバは理解する。
「アデルバ、何度言ったらわかるのかしら? 私の質問に答えない」
「母上……僕は、何もしていません。何もしていませんとも」
母親からの追及に、アデルバはゆっくりと首を横に振った。
彼は犯した過ちを、母親に打ち明けることなどできなかった。そんなことをしたら、どれだけの怒りを向けられるか、わかっていたからだ。
しかしその判断は、状況を先送りにしているだけである。何れはわかることだ。
だが、それでもアデルバの口からは何も出なかった。それをカルメアは、訝し気に見つめている。
「……とにかく、今回の件についてはラスタリア伯爵家に抗議します」
「こ、抗議、ですか?」
「あの無能な女を婚約者として渡してきたのですから、その補填をしてもらわなければなりません。婚約破棄までしたのですから、義はこちらにあります」
「そ、それは……」
カルメアは、アデルバが婚約破棄されて落ち込んだなどと判断したようだった。
彼女は彼女の方で、話を進めている。ただそれらの言葉は、アデルバの耳に入ってこなかった。彼の頭の中は、自分が犯したミスに関することでいっぱいだったのだ。