顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。

34.両親の様子

「ウェディバー伯爵家から抗議の手紙が届いたよ。ルルメリーナを婚約者として送ってきたこと、それからルルメリーナが婚約破棄したこと、その補填を望んでいるらしい」

 私は、お父様から受け取った手紙に目を通した。
 そこには、不快な言葉の数々が記されている。これはきっと、カルメア様が書いたものだろう。文面から私はそれを感じ取っていた。

「ルルメリーナが無能だったせいで、国王から疑いをかけられた。ラスタリア伯爵家の教育がどうなっているのか、何故そんな者を婚約者として送って来たのか……まったく、ひどい話ですね。そもそもの話、あちらがルルメリーナとの婚約を望んだというのに」
「そうだね。これには流石の僕も思う所があるよ」

 お父様は、少し怒っているようだった。
 優しく柔和なお父様が怒るなんて、なんとも珍しいことである。
 ただそれでも、口調はいつもとほとんど変わらない。恐らく家族以外にその変化はわからないだろう。そういったポーカーフェイスは、お父様のすごい所だ。

「しかしどうやら、ウェディバー伯爵家――というよりもカルメアは、権利書がこちらにあるということについてわかっていないようだね?」
「……そういえばそうですね。やけに強気といいますか」
「なるほど、どうやらあちらの家では報連相ができていないらしいわね」

 お父様の言葉に対して、お母様は笑顔を浮かべていた。
 その笑みは楽しそうな笑みだ。基本的には優しいが、お母様はどちらかというとサディストである。そのため、ウェディバー伯爵家を追い詰められることが楽しみなのだろう。
 それに対して、お父様は苦笑いを浮かべている。いくら侮辱されても、相手を陥れることは楽しいことではない。お父様は大方、そういう見解なのだろう。

「まあ、こんな要求は突っぱねてしまえばいいものよ。というよりも、あちらが婚約破棄のことを認めているなら話も早いじゃない。これであの二人をいくら追い詰めても、こちらが被害を受けることはないのだから」
「まあ、イルヴァドのことがある訳だから、必要以上に追い詰めることはしないけれどね」
「二人が再起できないように追い詰めるのだから、それ以上のことはないのではないかしら?」
「ウェディバー伯爵家を完全に潰すという訳ではないということだよ」

 お母様とお父様は、これからのことを話し始めた。
 私達の目的は、アデルバ様とカルメア様の排除だ。あの二人とルルメリーナの繋がりが切れた今、私達に最早躊躇う理由はない。
 こちらには切り札があるため、障害は恐らくないに等しいだろう。私はゆっくりとため息をつき、ことの終わりを感じるのだった。
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