顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。

4.最期の望み

 ラスタリア伯爵家とウェディバー伯爵家の婚約が決まったことは、めでたいことだったといえるだろう。
 私とウェディバー伯爵家の令息アデルバ様の婚約、それはウェディバー伯爵が熱望していたことだった。言うならば、彼の最期の望みだったといえるだろうか。

「友がこんなにも若くこの世を去ってしまうなんて……まだ信じられないことだよ」
「……そうですよね」

 ウェディバー伯爵の訃報を聞いて、お父様はひどく気落ちしているようだった。
 数年前に病に倒れたウェディバー伯爵は、つい最近身罷られた。医師から余命一年と宣告されてから、実に三年もの闘病生活を経て。

 お父様は、ウェディバー伯爵と懇意にしていた。
 きっと内心、かなり悲しんでいるのだろう。
 普段飲まないお酒を飲んでいるのも、きっとそれが原因だ。しかしそれでも、お父様は前を向こうとしている。

「彼の最期の悲願だった息子と君との婚約は確かに結ばれている。リフェリナ、君に色々と背負わせることになるのは、少し申し訳ないようにも思えるけれど……」
「いいえ、そのようなことはありません。ウェディバー伯爵には、私も良くしてもらっていましたから。彼の悲願を叶えられるのは、私にとっても嬉しいことです」
「……ありがとう」

 ウェディバー伯爵のことは、私もよく知っている。長男であるアデルバ様と同い年だからだろうか。私達三兄弟の中でも、特に私に入れ込んでくれていたような気がする。
 もしかしたら、私に次期伯爵夫人としての期待をしてくれていたのかもしれない。その期待には、できれば応えたい所だ。

「もちろん、次期伯爵となるアデルバのことは僕もサポートするつもりだ。現ウェディバー伯爵夫人カルメアも協力してくれるだろう。しかし、全てのことで助けられるという訳ではない。これからのウェディバー伯爵家は、君達二人が作っていくことになる。それは恐らく、険しい道になる。それはどうか、覚えておいて欲しい」
「はい。もちろんわかっています。決して簡単なことではないと……」
「うん……二人ならきっと乗り越えていけるだろう。きっと彼も天国でそう思っているはずだよ」
「ええ、そうですね……」

 アデルバ様は、ウェディバー伯爵家を継ぐことになる。結果として私は、すぐに伯爵夫人となる訳だ。
 それらはまだまだ若い私達にとっては、身に余る役としか言いようがない。ただ、私達がやるしかないのだ。

「法律故に、君達はまだ正式に結婚できる訳ではない。だけど、アデルバにはすぐにでも助けが必要だと思う。どうか支えてあげて欲しい」
「はい、そのつもりです」

 私は、お父様の言葉にゆっくりと頷いた。
 これからの道には、様々な困難が待っている。それを乗り越えられるように、私は必死に努力していかなければならないのだろう。
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