顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。
42.頼りなる長兄
「……お前達、こんな時間にどうしたんだ?」
「あ、お兄様……」
部屋を訪ねた私達に、お兄様は快く戸を開けてくれた。
ノックにたいする反応が早過ぎる気がするので、もしかしたら起きていたのだろうか。いや、お兄様は夜更かしするような人ではない。よく見てみると少し服も乱れているし、慌てて起き上がったということだろうか。
「すみません、お兄様。実はルルメリーナが庭から物音がすると言ってきて……」
「ルルメリーナ、説明できるか?」
「あ、はい。私、部屋で普通に寝ていたんですぅ。そしたら、急に物音がし始めて……」
「それで怖くなって、リフェリナの元を訪ねたという訳か」
基本的に、お兄様は妹思いだ。私達の危機には、率先して助けてくれる。
そんなお兄様は、ルルメリーナの怖がった顔を見て、表情を強張らせていた。なんというか、これならすぐに行動してくれそうだ。
「他に誰かに伝えたのか?」
「いいえ、まだです」
「各所への連絡は俺がする。とりあえず、お前達は俺の部屋にいろ。何かあったら、誰かを呼べ。大声をあげても構わない。とにかく危機を人に知らせるんだ」
「あ、はい。失礼します」
お兄様からの勧めで、私達は部屋の中に入った。
するとお兄様は、素早く最低限の身支度を済ませてから、部屋から出て行った。やはり対処が、とても迅速である。
このままお兄様に任されていれば、多分大丈夫だろう。泥棒だろうと幽霊だろうと、きっとなんとかしてくれるはずだ。
「……失礼します」
「え?」
そんなことを考えていると、部屋の戸が叩かれた。
聞き覚えのある声に、私は思わずルルメリーナと顔を見合わせる。その声は間違いなく、イルヴァド様の声なのだ。
「イルヴァド様、どうされたんですか?」
「ああいえ、ラヴェルグ様に起こされて、とにかくこの部屋にいるように言われまして……」
「なるほど、守るべき対象は一つの部屋に押し込めておくということでしょう」
「何かあったのですか?」
「ええ、詳しくは私もわかっていませんが……」
お兄様は、客人であり要人として扱うべきイルヴァド様を、私達と一つの部屋に押し込めておく方が良いと思ったのだろう。
その判断は、別に間違ってはいない。守るべき対象をまとめておくのは、良いことだといえるだろう。
「お姉様? 早く戸を開けてあげた方がいいんじゃないですかぁ?」
「え、ええ、もちろん、開けるわよ?」
「あっ……」
「その、こんばんわ」
ただ、寝間着姿をイルヴァド様に見られるのが恥ずかしいという私の心まで、お兄様は考慮してくれなかったようだ。
もちろん、それはこの状況ではどうでもいいことではある。しかしやはり、恥ずかしいものは恥ずかしいのだった。
「あ、お兄様……」
部屋を訪ねた私達に、お兄様は快く戸を開けてくれた。
ノックにたいする反応が早過ぎる気がするので、もしかしたら起きていたのだろうか。いや、お兄様は夜更かしするような人ではない。よく見てみると少し服も乱れているし、慌てて起き上がったということだろうか。
「すみません、お兄様。実はルルメリーナが庭から物音がすると言ってきて……」
「ルルメリーナ、説明できるか?」
「あ、はい。私、部屋で普通に寝ていたんですぅ。そしたら、急に物音がし始めて……」
「それで怖くなって、リフェリナの元を訪ねたという訳か」
基本的に、お兄様は妹思いだ。私達の危機には、率先して助けてくれる。
そんなお兄様は、ルルメリーナの怖がった顔を見て、表情を強張らせていた。なんというか、これならすぐに行動してくれそうだ。
「他に誰かに伝えたのか?」
「いいえ、まだです」
「各所への連絡は俺がする。とりあえず、お前達は俺の部屋にいろ。何かあったら、誰かを呼べ。大声をあげても構わない。とにかく危機を人に知らせるんだ」
「あ、はい。失礼します」
お兄様からの勧めで、私達は部屋の中に入った。
するとお兄様は、素早く最低限の身支度を済ませてから、部屋から出て行った。やはり対処が、とても迅速である。
このままお兄様に任されていれば、多分大丈夫だろう。泥棒だろうと幽霊だろうと、きっとなんとかしてくれるはずだ。
「……失礼します」
「え?」
そんなことを考えていると、部屋の戸が叩かれた。
聞き覚えのある声に、私は思わずルルメリーナと顔を見合わせる。その声は間違いなく、イルヴァド様の声なのだ。
「イルヴァド様、どうされたんですか?」
「ああいえ、ラヴェルグ様に起こされて、とにかくこの部屋にいるように言われまして……」
「なるほど、守るべき対象は一つの部屋に押し込めておくということでしょう」
「何かあったのですか?」
「ええ、詳しくは私もわかっていませんが……」
お兄様は、客人であり要人として扱うべきイルヴァド様を、私達と一つの部屋に押し込めておく方が良いと思ったのだろう。
その判断は、別に間違ってはいない。守るべき対象をまとめておくのは、良いことだといえるだろう。
「お姉様? 早く戸を開けてあげた方がいいんじゃないですかぁ?」
「え、ええ、もちろん、開けるわよ?」
「あっ……」
「その、こんばんわ」
ただ、寝間着姿をイルヴァド様に見られるのが恥ずかしいという私の心まで、お兄様は考慮してくれなかったようだ。
もちろん、それはこの状況ではどうでもいいことではある。しかしやはり、恥ずかしいものは恥ずかしいのだった。