顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。
43.闇夜の侵入者
各所に連絡を終えたラヴェルグは、庭に出て来ていた。彼は一早く事件について調べていたのだ。
まず調べたのは、庭に入るための門である。そこにいるはずの衛兵の様子を確かめに来たのだ。
「……これは」
門の前にいる衛兵が倒れているのを見て、ラヴェルグは目を丸めていた。
侯爵家を守るために雇った衛兵は、それなりの実力者だ。その衛兵が倒れているとなると、それをやったのは手練れということになる。
「……息はあるか」
衛兵が気絶しているだけだと確認した後、ラヴェルグは妹であるルルメリーナの部屋の周辺へと行くことにした。
状況からして、侵入者があったことは間違いない。その侵入者の足音をルルメリーナが聞いたのならば、目的はその部屋の周辺もしくは妹にあると、ラヴェルグは考えていた。
当然のことながら、妹達の元には人を向かわせている。ただそちらから、特に騒ぎは聞こえてこない。
となると、ルルメリーナの部屋の周辺で侵入者が何かをしている可能性がある。そう考えてやってきたラヴェルグの目に入って来たのは、割れた妹の部屋の窓であった。
侵入者はどうやら、そこから窓の鍵を開けて中に入ったようだった。ラヴェルグは、息を潜めながら部屋の中の様子を伺う。
「……」
その中には、一人の人影が確認できた。
見た目からして、恐らくは男。その男はルルメリーナの部屋を、物色しているようだった。
それを確認してから、ラヴェルグは周囲を見渡す。どこかに侵入者の仲間がいる可能性は、当然あった。まずラヴェルグは、それを確かめておきたかったのである。
「気配は感じられないか。俺が未熟という可能性もあるが……」
周囲の様子を確認し終えたラヴェルグは、一度呼吸を整えた。
そして彼は、部屋の中にある侵入者を見据える。そちらは、ラヴェルグのことにまったく気付いていない。部屋の中で何かを必死に探しており、それに夢中なようだった。
「これ以上、俺の妹の部屋で好き勝手させる訳にはいかんな……おい!」
「……っ!」
窓からそっと部屋の中に入ったラヴェルグは、言葉を発しながらその足を振るった。
それはいともたやすく侵入者の顔面に入った。油断していたためか、ラヴェルグの声に驚き動けなかったようだ。
それを見て、ラヴェルグは相手がそこまでの手練れではないことに気付いた。衛兵がやられたことには何か理由があるということも。
「事情は後で聞けばいいだけか……」
「おぐっ!」
そんなことを考えながらも、ラヴェルグは足を振り抜いた。
それにより侵入者の体は壁に叩きつけられて、彼はそのまま床に崩れ落ちていく。
「……何?」
そこでやっと、ラヴェルグは暗くて見えなかった侵入者の顔を見ることができた。
その顔には見覚えがあった。ラヴェルグの目の前にいたのは、ウェディバー伯爵家の令息アデルバだったのだ。
まず調べたのは、庭に入るための門である。そこにいるはずの衛兵の様子を確かめに来たのだ。
「……これは」
門の前にいる衛兵が倒れているのを見て、ラヴェルグは目を丸めていた。
侯爵家を守るために雇った衛兵は、それなりの実力者だ。その衛兵が倒れているとなると、それをやったのは手練れということになる。
「……息はあるか」
衛兵が気絶しているだけだと確認した後、ラヴェルグは妹であるルルメリーナの部屋の周辺へと行くことにした。
状況からして、侵入者があったことは間違いない。その侵入者の足音をルルメリーナが聞いたのならば、目的はその部屋の周辺もしくは妹にあると、ラヴェルグは考えていた。
当然のことながら、妹達の元には人を向かわせている。ただそちらから、特に騒ぎは聞こえてこない。
となると、ルルメリーナの部屋の周辺で侵入者が何かをしている可能性がある。そう考えてやってきたラヴェルグの目に入って来たのは、割れた妹の部屋の窓であった。
侵入者はどうやら、そこから窓の鍵を開けて中に入ったようだった。ラヴェルグは、息を潜めながら部屋の中の様子を伺う。
「……」
その中には、一人の人影が確認できた。
見た目からして、恐らくは男。その男はルルメリーナの部屋を、物色しているようだった。
それを確認してから、ラヴェルグは周囲を見渡す。どこかに侵入者の仲間がいる可能性は、当然あった。まずラヴェルグは、それを確かめておきたかったのである。
「気配は感じられないか。俺が未熟という可能性もあるが……」
周囲の様子を確認し終えたラヴェルグは、一度呼吸を整えた。
そして彼は、部屋の中にある侵入者を見据える。そちらは、ラヴェルグのことにまったく気付いていない。部屋の中で何かを必死に探しており、それに夢中なようだった。
「これ以上、俺の妹の部屋で好き勝手させる訳にはいかんな……おい!」
「……っ!」
窓からそっと部屋の中に入ったラヴェルグは、言葉を発しながらその足を振るった。
それはいともたやすく侵入者の顔面に入った。油断していたためか、ラヴェルグの声に驚き動けなかったようだ。
それを見て、ラヴェルグは相手がそこまでの手練れではないことに気付いた。衛兵がやられたことには何か理由があるということも。
「事情は後で聞けばいいだけか……」
「おぐっ!」
そんなことを考えながらも、ラヴェルグは足を振り抜いた。
それにより侵入者の体は壁に叩きつけられて、彼はそのまま床に崩れ落ちていく。
「……何?」
そこでやっと、ラヴェルグは暗くて見えなかった侵入者の顔を見ることができた。
その顔には見覚えがあった。ラヴェルグの目の前にいたのは、ウェディバー伯爵家の令息アデルバだったのだ。