顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。

47.部屋の惨状

 アデルバ様のことは、警察に突き出すということになった。
 衛兵への暴行、住居への侵入、彼はラスタリア伯爵家に忍び込んだことによって、様々な罪を犯した。捕まえるだけの理由は充分ある。
 ただ恐らく、彼はすぐに保釈されることになるだろう。カルメア様が、保釈金を積むはずだからだ。

 ラスタリア伯爵家は、それを見逃すという判断を下した。
 それはお母様の判断だ。それを妨害するよりも、あの二人を糾弾する準備を進める方が良いと、思ったようである。

 実際の所、二人の件については各所に連絡が渡り始めている。向こうが保釈によってごちゃごちゃとしている内に、こちらの準備は完了しそうだ。
 そうなった場合、アデルバ様とカルメア様は完全に油断した所で打撃を受けることになる。元々防げないことではあるのだが、二人が邪魔をする暇さえもないだろう。

「あーもう。最悪ですぅ」
「まあ、そうですよね……すみませんね、ルルメリーナ嬢。僕の兄上のせいで、こんなことになってしまって」
「別にイルヴァド様が悪い訳ではないですから、謝らなくても結構ですよぉ。これは全部、アデルバ様のせいですから」

 アデルバ様のことを警察に引き渡した後も、現場の調査というものは行われていた。
 その間、ルルメリーナの自室は使えなかったのである。それが終わった訳ではあるが、部屋の状態は事件の時のままだ。部屋はかなり荒らされている。

「……壁に染みがついていますねぇ。これって、アデルバ様の血でしょうか?」
「ああ、そういえば怪我していたわね」
「こっちの壁は凹んでいますね。一体、何があったのでしょうか?」
「……まあ、アデルバ様が暴れまわったのでしょう」
「もーう、アデルバ様は本当にどうしようもない人ですねぇ」

 ルルメリーナの部屋には、傷や染みなどが残されていた。
 多分それらは、お兄様が暴れたことによってできたものではある。
 そうした原因が、そもそもアデルバ様にあるのだが、お兄様ももう少し加減できなかったものなのだろうか。ただ賊の前で愛する妹の部屋の状態を気にするのは、無理な話なのかもしれない。

「まあ、しばらくは私の部屋にいればいいわ。元々広すぎる部屋である訳だし、特に困ることもない訳だし……」
「そうですねぇ。しばらくはお世話になりますぅ」

 現在、ルルメリーナは私の部屋にいる。
 別にそれで不便は感じていない。しばらくは、それでも問題はないだろう。
 ただ、できれば早く部屋が元に戻って欲しい所だ。プライベートな時間は、私にもルルメリーナにも必要だろうし。
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