顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。

49.広まっていく事実

 お父様の手引きにより、ウェディバー伯爵家のスキャンダルは様々な人達へと知れ渡ることになった。
 そのスキャンダルは、当然のことながらとても大きなことである。現当主にウェディバー伯爵家の血が流れていないこと、それはすぐに問題として取り上げられることになった。

「いよいよ始まりましたね……」
「ええ、イルヴァド様、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。覚悟はしていましたから」

 現在、社交界では様々な憶測が飛び交っている。
 アデルバ様やカルメア様への批判に関しては、私も特に気にしてはいない。あの二人には、色々と煮え湯を飲まされた。その行為に対する報いを受けるのは、当然のことであると思う。

 一方で、イルヴァド様への風評については、心が痛くなった。
 それが仕方ないことだということは、私もわかっている。しかしそれなりに長い間ともに過ごした彼が、心無い言葉を受けるということは、やはり辛いことなのだ。

 ただ、当の本人であるイルヴァド様は、涼しい顔をしていた。
 本当に、覚悟を決めていたということなのだろう。彼は風評には、負けなさそうだ。その表情を見ていると、そう思える。

「それに、僕にはこの血筋という最大の武器がありますからね。父上を知る者なら、僕の顔を見て、血の繋がりがないなんて思いはしないでしょう。実際に鑑定書もあります。もちろん、様々な風評は被ることになりますが、僕は揺るぎません」
「それはそうでしょうけれど、やはり色々と不安なのではありませんか?」
「いいえ、不安なんてありませんよ。リフェリナ嬢やラスタリア伯爵家の方々が、協力してくださってしますしね」
「イルヴァド様……」
「あなた方と手を取り合えたことは、僕にとって素晴らしい幸運でした」

 イルヴァド様は、私に笑顔を向けてきた。
 彼の言葉は、もちろん嬉しい。ただそれは私が受けるべき言葉であるかどうかは、微妙な所だ。
 私は別に、何か特別なことをした訳ではない。両親やお兄様、それにルルメリーナと違って、今回の件では何もしていなかった。そのためか、少し気が引けてしまう。

 今からでも、私にできることがあるのかもしれない。イルヴァド様の言葉を聞いて、私はそのように思った。
 今回の件は、ルルメリーナが主となって動いていた。追い返されたこともあって、私はアデルバ様やカルメア様に関われなかったし、やることが特になかったのである。

 ただ、今は少し状況も変わった訳だし、私にもできることはあるだろう。
 両親やお兄様からの指示を待っている場合ではない。早速、お父様辺りに聞きに行ってみるとしよう。
< 49 / 80 >

この作品をシェア

pagetop