顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。

61.悪い立場

 ウェディバー伯爵家のアデルバ様とカルメア様は、全ての責任を押し付けられることになった。
 死人に口なしというのは酷なことであるかもしれないが、本人達が亡くなったことによって、かなり都合が良いように事実が書き換わっているのだ。
 そのお陰もあって、イルヴァド様のウェディバー伯爵の襲名もスムーズに行われたらしい。

「まあ、イルヴァドの立場は確実に悪いだろうね……」
「そうですよね……」

 お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 スムーズに襲名したとはいえ、イルヴァド様の現状は良いものとは言い難い。国王様のお墨付きがあるため表面上は問題ないのだが、裏では色々と言われているみたいなのだ。

「もちろん、ラスタリア伯爵家としては彼のことを助けるつもりだ」
「お母様は、許可してくださったのですか?」
「ああ、それについては快く許してくれたよ。まあ彼女としても、二人の死には色々と思う所があったのかもしれないね。まあ、二人には同情などはしていないようだったけれど、それは敵対して追い詰めるからには覚悟していたということだろう」

 お父様は、とても淡々と言葉を発していた。
 それはきっと、お父様自身も覚悟をしていたからなのだろう。追い詰められた二人が、このような結末を迎えることを。
 貴族同士の争いというものは、そういうものだと考えるべきだったのかもしれない。その点において、私は覚悟が足りていなかったといえる。

「どちらかというと、一つ屋根の下で暮らしていたイルヴァドに対しての情があるということなのかもしれないね」
「お母様もそうなのでしょうか? 少し意外です」
「ふふ、それをメルフェリナが聞いたら悲しんでしまうね」
「あ、いえ、別に悪い意味で言った訳ではないのですけれど」

 お父様の指摘に、私は息が詰まった。
 今の言葉に、悪い意味以外の捉え方などはないだろう。お母様がこの場にいなくて、本当に良かった。危うく怒らせる所だった。

「実際の所、メルフェリナはイルヴァドのことを気に入っているようだったよ。好感が持てる青年だと言っていたからね」
「そうだったのですか。それは知りませんでした……」
「リフェリナとしては、どうなのだろうか?」
「え?」
「君はイルヴァドのことを、どう思っているのかな? 君の意見を、聞かせてもらいたい」
「私の意見、ですか……?」

 そこでお父様は、私の目を真っ直ぐに見つめて質問をしてきた。
 その質問に、私は面食らってしまう。それは一体、どういった意図の質問なのだろうか。
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